刑務所の前 (第2集) (Big comics special)
第1集に続き、作者が銃刀法違反で服役するに至る経緯と獄中記、そしておそらくは平安期と思われる時代のある少女の物語とが、入り乱れる漫画。各エピソードは一見ランダムに唐突に切り替わるが、前後のエピソードに関連はありそうで、ない。なさそうで、ある。
獄中記に関しては、もう10年くらい前のことのはずだけれども、座布団の模様まで細かく説明されている。すべて記憶に頼っているとは思えないし、実際獄中で書いたと思われるメモのコピーまで載っているのだが、刑務所で書いたものは持って出られるのか。現実にムショの中にいて、書いたものを世に出している人もいるわけだし、結構ユルイものなんだ。
作者が描いているとおり、三食揃って適度な運動と労働もできる完璧に規則正しい生活に、テレビが見られて本も読め、誕生パーティーまであるのだから、ある種の人間にとっては刑務所は天国のようなところなのかもしれない。これじゃあ犯罪の抑止にはならないんでは。
しかしこの漫画、スゴク面白い。「乾季のカラハリ砂漠」のような布団の色を絵の具で再現するのは難しいと思っていたところに、一度使った日本茶ティーバッグの色がピッタリだと気づく。その布団の茶色の部分と同じ色をした週刊誌の切れ端を筆箱に隠しておいたところ、看守に見つかりあっさりと捨てられてしまって、「いいモン みんな とられちゃうナ、検査で」。こういう、日常的なようで非日常的な感覚は、刑務所でしか味わえないものなのかもしれない。一週間くらいならムショ入りもいいかな、などと思ってしまう。