川又千秋『幻詩狩り』

幻詩狩り (創元SF文庫)

幻詩狩り (創元SF文庫)

SF大賞を受賞した当時、読もう読もうと思っているうちにいつの間にか入手困難な状態になっていたので、今回再版されるやすぐに買っておいた。
改行が多くて読みやすいのと、展開が早くてテンポが良いので、ほとんど一気読み。
読むと死んでしまうほどのドラッグ的な魔力を持つ言葉で書かれた詩が人々の間に伝染してゆき、ついには特高めいた組織による取り締まりにまで発展する。という設定はやはりディック的な世界観を連想してしまうが、伝染するのがドラッグではなくて言葉であるというアイディアがすごい。
実在の芸術家たちの間にその詩が広まっていき、どんどん変死していくところは、鳥肌もの。件のディックの死因もその詩であることもほのめかされている。
その詩を読むと死んでしまうという設定は『リング』を、言語と時間の関係性はテッド・チャンの「あなたの人生の物語」を連想してしまう自分が悲しい。やはり、出てすぐに読んでおくべきだったか。
とはいえ、黄金期の日本SFのパワーを感じさせる小説であることには変わりない。