『おいしいコーヒーの真実』

発展途上国の農作物の価格が先進国の先物取引市場で決定されてしまい、生産者にしわ寄せが行くというのは、なにもコーヒーに限ったことじゃあないと思う。コーヒーが石油に次ぐ国際的貿易商品だというのは知らなかったけど、コーヒーならではの特殊な事情などが描かれているわけではないので、肩透かしを喰らった感じ。
チラシには、世界消費量が1日20億杯とあるけど、アメリカンとエスプレッソでは、1杯のコーヒーに要する豆の量も違っているだろう。イギリスやフランスのコーヒーはなぜあんなに不味いのか、TULLY'Sはそこそこ美味いのにスタバが不味い理由とか、味やコーヒーショップのビジネス事情といった話題も期待していたのだけど。
ちょうど、残留農薬のせいでモカが品薄になりそうだとか、アメリカではスタバが600店も閉鎖するとか、タイムリーな話題だったのだけど、そういったことに関連する情報はなかった。
エチオピアにおける貧困や医療問題、教育問題なども語りたいのはわかるけど、それはたまたまコーヒーがエチオピアの主な輸出品であり、それで生計をたてている人々が多く存在するからであって、そのような根深い問題が、あたかもコーヒーといういち嗜好品の生産・流通・消費という構造に原因があるかのような見せ方をするのは、ドキュメンタリーとしてフェアじゃないと思う。ガルシア・マルケスの小説で、南米ではバナナでも同じような目に遭っているという描写があったし、もっとグローバルな視点で考えなきゃならないんじゃないのか。
それにしても、エチオピアのコーヒー農場で働く人たちが淹れていたコーヒーは美味そうだった。豆をフライパンで焙煎して木の臼で挽き、たぶん煮出していると思う。でも、こういうのに入れちゃうと台無し。