山上たつひこ『一軒家』

一軒家 (単行本未収録傑作選 1)

一軒家 (単行本未収録傑作選 1)

表紙があまりに地味でかなり時代がかった内容であることを予想させたのでちょっと悩んだのだが、買ってよかった。
この巻に収録されている作品群には、共通する一種のテイストがある。そういえば、昔はSFはミステリのサブジャンル的扱いをされていたんだっけなあ。子供向けのSFの入門書で、SFとはミステリのトリックとして科学的な知識や技術を用いたものである、という説明がされているものもあった。そもそも、「創元推理文庫」だったわけだし。
表題作も、白土三平ぽい土俗的なタッチとは裏腹な展開を見せるので、ちょっとびっくりした。
まあ、本書の作品群をSFとしてみると、いろいろとツッコミどころもあるし、すでに黄金期を迎えていた当時の日本のSF小説と比べると、多少見劣りする感があるのは否めない。けれども、さすがにこの貸本漫画の全盛期を知らない世代のおれにとっては、貸本漫画時代の独特の雰囲気を少しは窺うことができた。
ちょっと謎なのは、「還元」という作品で、当時はまだ存在すらしていなかった、こまわり君やイボグリ君が描かれているコマがあること。かなり後になってから加筆されたとしか考えられないのだが、その理由がわからない。巻末のリストには、初収録とあるが…。