イントゥ・ザ・ワイルド

主人公は大学を優秀な成績で卒業したばかり。だが、貯金をすべて寄付し、家族にも内緒にして旅に出る。
カネやモノに執着するのが嫌だから社会から逃避して山ごもりするんだー、という主人公の態度には実は結構共感できた。途中で出あうヒッピーや養子縁組みを申し出る孤独な老人らに与することもなく、独りでアラスカを目指すというのも、正しいアウトサイダーのあり方だと思う。
だが、主人公がそのような性向を持つに至った理由が、両親の不仲と特に厳格な父親にあるというのが、動機づけとしては弱いように感じた。また、最終的に主人公は孤独な死を迎えるのだが、いまわの言葉が、人は人々の中にあってこそ幸福になれるという趣旨のもので、これには閉口してしまった。いくら孤独で衰弱しながらの死とはいえ、最期までアウトサイダーとしての志を貫いて欲しかった。
しかしエンドタイトルでわかったのだが、これは実話なのであった。つまるところ彼は大学を出たての頭でっかちな若造にすぎないわけで、客観的に見れば、甘ったれお坊ちゃんの我が儘で無謀な行為の必然的帰結と評されても仕方がないと思う。そもそも彼は自分がアウトサイダーであると認識してはいなかったのかもしれない。
だけど、彼の放浪を描いた映像はロードムービーとして面白かったし、現代社会を捨てて独りで荒野で生きる様子に一種の憧れを抱いたのも事実。そうか、おれが今いるこの場所こそが荒野であると定義づければいいのか。
ところで、この映画はすでにDVDになっているようだ(asin:B00130HI5G:title)。Amazonのカスタマーレビューを見ると、作品自体の評価の高さとは裏腹に、「このレビューが参考になった」率が異常に低いことに笑ってしまった。どう見たらこの映画を「アドベンチャーもの」と位置づけられるというんだ。