つげ義春コレクション『ねじ式/夜が掴む』

つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)

つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)

今まで何種類も全集が出ていていくつか持ってはいるんだけど、なぜかタイミングが悪くて買い逃したりして欠巻がある。文庫なら手軽だし、このシリーズを揃えて常備することにしよう。刊行予定を見るとちゃんと『四つの犯罪』もあるから、なんとかクリエイティブの復刻版はやっぱり買わないでおこう。
巻頭の「ねじ式」のカラーページにちょっと違和感を覚えたが、高野慎三の解題で昔のカラー印刷の方法が解説されていた。モノクロのページでもグラデーションがかかっている部分はやはり昔の本と雰囲気が違って、デジタル処理的な雰囲気が拭えないのだが、印刷がつぶれてしまうよりはマシか。
構成がなかなか良くて、「ねじ式」「ゲンセンカン主人」でいきなりガツンときて、「夢の散歩」や「外のふくらみ」のように夢、妄想、不安といった深層心理に訴えるものが続き、終盤は「夏の思いで」や「退屈な部屋」のような日常に近いテーマのものになる。
「ヨシボーの犯罪」を読んで思ったが、この雰囲気は吉田戦車だ。順番はもちろん逆だけど。
もし「最も多くの本に収録された短編漫画」を挙げるとしたら、かなりの確率でこの「ねじ式」になるんじゃないだろうか。漫画の神様は別にいるかもしれないけど、日本の漫画文化の多様性や懐の深さを生み出した重要な漫画家の一人であることは間違いない。