THIS IS ENGLAND

音楽に80年代のUKロックがたくさん使われているようなので、観に行ってきた。しかし、こんな難しい映画は初めてだなー。
サッチャー政権時代のイギリスが舞台で、主人公は父親をフォークランド紛争で亡くしている。この少年が不良グループに取り込まれて、さらにナショナリストのグループに参加してパキスタン移民への嫌がらせや暴力行為に及ぶようになる。
ただこの主人公は、少年というよりはむしろ「男の子」なのだ。せいぜい11、2歳といったところ。この主人公が、前述のように大人達に混じって商店を襲ったりもするのだが、いかんせんあまりに子供子供しているので現実的じゃない。あるハイティーンの少女に憧れて「俺の彼女になれ」なんて言ったりもして、あまつさえ彼女はそれにOKするのだが、一瞬これはギャグ?などと思ってしまった。
ナショナリストのグループを率いる男も、特に人望があるわけでもないし、失恋してヤケを起こすような小者だ。なぜ彼がこのグループをオルグできたのか、説得力に欠ける。
サッチャリズムフォークランド紛争、失業と貧困という当時のイギリスの世相をすこしずつつまみ食いしてはいるが、それが主人公達の行動に結びつかない。音楽にしてもただの添え物程度の扱いで、映画のテーマ性(があるとして)とはあまり相互しない、皮相的な使われ方。
ラストは、件のナショナリストへの決別と母親との和解という紋切り型。とどめにエンディングは、The Smithsではなく、Clayhillという最近のバンドがカバーしたPlease, Please, Please, Let Me Get What I Want。意味がわからぬ。これならt.A.T.u.のHow Soon Is Now?のほうがまだまし(嘘)。
脚本が難解だとか高度な映像表現を用いているというわけでは決してなく、いったい何を訴えたくてこのような映画を作ったのか、まったく理解できない。という意味で難しい映画なのであった。