バリントン・J・ベイリー『禅銃』

旧版はかなり昔に読んでいるが、内容はきれいさっぱり忘れていた。この新装版は翻訳が新しくなったわけではないが、ちょうど再読したかったしトールサイズの新装版にしてはカバーの絵が好みだったので、読んでみた。
途中でちょっと読むのを休んでしまったが、これは一気に読むべきだった。ベイリー作品の例に漏れず、場面転換が早くて勢いまかせのようなエピソード構成なので、切れ切れに読んでいるとその奔放なノリについていくのが難しかった。
ここに出てくるベイリーならではの(疑似)物理学も、正直なところよく理解できなかった。2つの粒子間に働く力は斥力のみだが、宇宙に存在する他の全粒子からの斥力がそれら2つの粒子に働くので、そこだけに注目すると局所的には引力が存在しているように見える、という理解をしたのだが。これなら、イーガンのほうが断然わかりやすいな。
ただ、その物理学があってこそ、禅銃が活きてくるというのはわかった。とはいっても、その禅銃の謎は後半の怒濤の展開の中で唐突にあわただしく解説されるので、もっと謎を小出しにしてくれればよかったのに……というような技法を求める作家ではないか。