チャイナ・ミエヴィル『ジェイクをさがして』

ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

決してつまらないわけではないんだけど、そうかといって超面白いというわけではなく、なんだか不思議な味わいがあるなあ、でもオレ好みじゃあないかなあ、と最後までノリきれずに読んだ。で、読み終わってまた目次に戻り各短編を反芻してみると、あれ、けっこう面白かったんじゃない?ってなんじゃそりゃ。
オチをつけない終わり方は嫌いじゃあないし、現実をちょっとだけずらしたときにその隙間から染み出してくるような違和感は、恐怖というよりもある種の生理的な感覚かもしれない。街路が意志を持っているかのように時空を超えて唐突に出現したり消失したり、過去の景色を映しだす窓や、鏡像が現実のほうに越境してきたり(どちらが「現実」でどちらが「鏡像」?)、基本的なアイディアはすごいと思う。この作者の、幾何学的・光学的・歴史的・言語的境界への視点はとても面白い。そのような境界とは人間が恣意的に定義したものにすぎず、境界を定めた瞬間に「向こう側」もまたある種の意志をもって存在を始めるのではないか。なんていうことを考えたりして。
実は長編の『ペルディード・ストリート・ステーション』が面白そうで興味があったのだけど、そのボリューム故に躊躇していたところだった。また、訳者あとがきでは近刊とされている『アンランダン』が河出書房からまさに今日発売になったのだが、カバーのキャラクター紹介に誤りがあるらしい*1。誤りを公表するどころか読者からの指摘を顧みないような小学館クリエイティブとは違うんです。ということで、下世話なマニア心も刺激されたので、読んでみたくなった。