星野之宣『スターダストメモリーズ』

文庫版(2008年刊)を持っているのだけど、内容はすっかり忘れていた。
表題作のシリーズは、『2001夜物語』をリヴァイスしたような感じか。しかし各編ともページ数が少ないせいか、深みが足りないように思った。それでも、「セス・アイボリーの21日」は素晴らしい。今日的なSFという趣で、とても10年以上も前に描かれたとは思えない。『2001夜物語』が人類が宇宙に拡散していく話が主だったが、最終的に多くの人類は地球に還ってきた。「スターダストメモリーズ」は、そんな人類が改めて宇宙へ進出するが、その真の目的は「生への執着」にあるようで、冒険心を失い保守的になった人類を批判的に描いているように思えた。これは表題作に限らず、この単行本に収録されているほぼ全ての作品に言えそうだ。
最後に収録されている「夜の女神」は、やや感傷的に過ぎて個人的には今ひとつ。でもこれ、1978年に描かれているんだな。冷戦時代という背景を考えれば、仕方ないか。