山岸凉子『日出処の天子』
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/11/22
- メディア: コミック
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しかしこれはさすがに完全版と謳うだけのことはある。紙や印刷の質はいいし、カラーや扉も完全に再現されているし。前述のコミックスたちに比べるとコントラストが強めで、細部、特に人物の表情の印象がちょっと違っていたり、カラー部分にこんなグラデーションがかかっていたのか、といった新たな発見があった。もう1回目の最初のページからして、風景の木々の中に桜が含まれていることを、カラーページで初めて知った。「あらら内輪話」(だったっけ?)でギャグもやっていたが、連載5回目の扉には吹き出してしまった。
しかし、ここ数年は『テレプシコーラ』が完結したり、前述のように過去の作品の再編集版が出たりして、山岸作品に触れる頻度がとても高かった。そのせいだろうか、今回『日出処の天子』の冒頭を久しぶりに読んでみて、実はこの作品は山岸作品の中でも異色なのではないかと感じた。どこが?と問われると返答に困るのだが、日本のしかも飛鳥時代という背景のせいだろうか、「副馬」や「水煙」といった上代を描いた作品は他にもあるのだけど、それらともやはりどこかが違う。厩戸皇子のようなキャラクターが珍しいからだろうか。
というようなことをつらつらと書いていて思いついたが、ここに出てくる権謀術数や政事の描写は、よしながふみの『大奥』に受け継がれているんじゃないか。