トム・ゴドウィン他『冷たい方程式』
- 作者: トム・ゴドウィン・他,伊藤 典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/10
- メディア: 文庫
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時代的な古さはそれほど感じないが、現在のSFシーンからみるとやはり素朴だなあという感想は否めない。けれども、元々SFってこういうエンターテインメントだったよね、という基本を改めて教えてもらった感じがする。
以下、それぞれの収録作について簡単にコメントを。
- ロバート・シェクリー「徘徊許可証」
一発目からいきなりこれは面白すぎる。シェクリーというと『不死販売株式会社』くらいしか読んでいなくて、それも確か小学生くらいのとき。「ゾンビ」という言葉を初めて知ったのもその作品だったと思う。
しかしこの作品はユーモア小説として間違いなく一級品だ。電車の中で読んでいて、吹き出しそうになった。
- ジョン・クリストファー「ランデブー」
これはSFというよりは、ファンタジー寄りか。短編としてよくまとまっていて話も上手いので、わりと好き。
- ウォルター・S・テヴィス「ふるさと遠く」
なぜか名前に聞き覚えがあった。映画の『ハスラー2』は観たが、たぶんそれで憶えているわけではなさそう。
これもファンタジーぽいけれど、不思議な郷愁にも似た感情を覚えた。
- アイザック・アシモフ「信念」
空中浮揚というと『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズに出てくる、「落ちることに気がつかないことによって空中に浮かぶ」という方法が思い出されて、このアシモフの短編のタイトルもそんな感じなのかなあと思ったが、さすがに全然違った。
- トム・ゴドウィン「冷たい方程式」
あれ、こういう話なんだっけ?当時いわゆる「方程式もの」が流行って、特に筒井康隆の「たぬきの方程式」がとても印象に残っていたので、もうひとひねりある話だと思っていた。
- ジャン・ストラザー「みにくい妹」
読み始めてしばらくたってから、ああこれはあの有名な童話の視点を変えた話なのか、と気がついた(遅い)。こういう小説は大好き。
- アルフレッド・ベスター「オッディとイド」
いかにもベスターらしい短編。「世界震駭者」のような人物がいたりフロイト的なオチが、『分解された男』を思わせる。それにしても、やはりサービス精神が旺盛といおうか、しつこいくらいに畳みかけるようなユーモアがたまらない。
- C・L・コットレル「危険! 幼児逃亡中」
あとがきにもあるれけれど、キングの「ファイアスターター」の元ネタでは、という噂があるらしい。まあキングはあまり読まないのでどうでもいいが。子供のころにこの手の話はたくさん読んだので、新鮮味がなかった。
- クリフォード・D・シマック「ハウ=2」
これはいい。いかにも米SF黄金期の作品という趣。文明批判と社会批判が面白おかしく、かつアイロニカルに描かれていて、とてもよかった。