山尾悠子『歪み真珠』

歪み真珠

歪み真珠

掌編集といっても、やや長めの短編がひとつ含まれている。その短編は『ラピスラズリ』と同じ世界観か。「遠近法」に言及している作品もある。
最小限の語数で世界観を構築するにとどまらず、その世界の内部においては詳らかにはされないであろう、暗部や禁忌を仄めかす手管がたまらない。寝る前に一編ずつゆっくり読むつもりが、わりと早く読めてしまった。
「歪み真珠」あるいは「バロック」という言葉を含む作品が収録されているわけではないが、この題名こそ本書に相応しい。造本も美しく、所有しているだけでも幸せになれる本。