SJ・ワトソン『わたしが眠りにつく前に』
- 作者: SJ・ワトソン,棚橋志行
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: 文庫
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そんな朝、彼女を診ているという医者から連絡があり、彼女自身が毎日つけている日誌の存在を知らされる。だがその日誌の冒頭には、夫を信じてはいけない、と書かれていた。と、冒頭のあらすじだけでもかなりグッとくる、サイコスリラー。
記憶障害とはいっても過去のことを全く思い出せないわけではなく、些細なきっかけで断片的に記憶が甦ることもあり、彼女の日誌には少しずつではあるが、日々彼女自身の歴史が再構築されていく。ページ数では本書の約半分がこの日誌にあてられている。読者は主人公と一緒に彼女の記憶をたどっていくわけだが、どことなくいびつで不穏な雰囲気が感じ取れる。また主人公がいわゆる「信頼できない語り手」だということもあって、どこに仕掛けがあるかわからないというスリルがある。派手な事件などが起きるわけではないけれど、リーダビリティは高い。
ただ、自分にしては珍しく、かなり早い段階でネタがわかってしまった。それでも、あまりの面白さに後半からは一気読みしたし、なかなかよい読書体験ではあった。なんとこの作者はこれがデビュー作だそうで、リドリー・スコット制作で映画化もされるらしい。これは次回作も楽しみ。