ガイ・バート『体験のあと』

体験のあと

体験のあと

この作者による『ソフィー』があまりに素晴らしかったので、本書をすぐ注文してしばらく積んでいた。で、これもまたすごい小説だった。
5人の高校生が、校舎の片隅にうち捨てられた地下室で3日間を過ごすという計画を面白半分に実行する。発案者は、頭が切れてカリスマ性もある彼らの同級生マーティン。彼自身はそれには加わらず、3日後に彼らを地下室から出しに行くことになっている(地下室には電気も水道も通っているが、階段がついておらず、縄ばしごで昇り降りするしかない)。ところが、約束の3日が経っても、マーティンがやってこない。何らかの行き違いがあったのか、それとも彼の度を越した悪戯なのか……
というのがメインのプロットなのだが、二百数十ページというボリュームのわりには、視点というか語り口が三種類あり、それらが結構頻繁に入れ替わるのでやや戸惑った。メインのパートは、その先に極限状態が待ちかまえていることが予想される割には、それほど緊迫感が伝わってこない。作者が18歳のときに書いた作品だというから、やはり『ソフィー』には及ばないかと思っていたら……
ネタバレになるからこれ以上内容には言及しないけど、これは見事というしかない。もう一度最初から読み直さなきゃ。