ダイアン・ジェーンズ『月に歪む夜』

月に歪む夜 (創元推理文庫)

月に歪む夜 (創元推理文庫)

著者のデビュー作ということだけど、あらすじに惹かれたので読んでみた。
ケイト、ダニー、サイモンの3人の大学生は、1972年の夏休みにサイモンの叔父(不在)の家で過ごしていた。ケイトとダニーは恋人同士で、ケイトは親には内緒で来ている。そこへ、トゥルーディーという少女が現れ、仲間に加わることになる。少女といっても、高校生であることがのちにわかるが、それ意外の素性はほとんど謎だ。
このトゥルーディーが加わることにより、彼らの暮らしは少しずつ歪んでゆく。彼女は自分に霊感があると言い出し、かつて近所で死んだ女の話を始めたり、降霊会を始めたりする。といっても、ストーリーがオカルト方面に流れていくわけではなく、活発な美少女であるトゥルーディーに他の3人が振り回されていくという形。
その夏休みの章の合間に、現在のケイトのエピソードが挿入される。現在彼女は50代。教師を早々に引退して一人暮らしをしているのだが、そこへある日ダニーの母親から、会って話がしたいという手紙が届く。この現在のパートで、ダニーもトゥルーディーもすでに死んでいることがわかる。ダニーにいたっては自殺したらしいし、トゥルーディーの死に様も普通ではなかったことが窺え、彼らの死には何らかの謎が隠されているらしいことがわかってくる。
ダニーとトゥルーディーはなぜ死んだのか、楽しかったはずの夏休みに何が起きたのか、謎が徐々に明らかになっていく過程がとてもスリリング。過去パートと現在パートの構成も絶妙だし、全体的にとても丁寧に書かれているという印象。ラストにもひとひねりあって、なかなか楽しめた。