ももいろクローバーZ JAPAN TOUR 2013「5TH DIMENSION」(2日目)

2日目の今日はスタンド席だったが、1階の4列目だったので、わりとよく見えた。ステージからは少し遠かったけれども。
今日は「5TH DIMENSION」の世界観とストーリー性に着目してみた。SF的でありまた神話的でもあるというのは1日目の感想でも書いたことだけど、もう少し突っ込んで考察、というか妄想してみたい。
序盤の数曲は、永い眠りからの覚醒あるいは再生をイメージしている。これは「Neo STARGATE」のMVの内容からも明らか。また、このMVの衣装が、メビウスのデザインによる「エイリアン」の宇宙服にとても似ているというのも象徴的。
そしてダンサー達によるパフォーマンスを挟んで次のパートでは、既発のシングル曲である「労働賛歌」が含まれているのだが、ここであることに気がついた。元歌は、日本の高度成長期〜バブル期〜バブル崩壊〜デフレ期という経済状況の変化を背景として労働者の立場から労働というものについて語るというのがテーマだ。
しかしこのツアーのライブにおいては、モニターに流れる映像はスチームパンクを思わせる歯車やシリンダーといった機械部品であり、またセンタースクリーンに映し出されるメンバー達のパフォーマンスの映像は、あえてモノクロにされている。この世界観は、フリッツ・ラングメトロポリス」のイメージではないか。センタースクリーンの映像にフィルムノイズ加工が施してあるのも、そう考えると納得がいく。したがって、このツアーにおける「労働」の意味とは、産業革命直後に生まれた概念・階級としての労働(者)を指していると思われる。とするなら、このパートにおけるももクロたちの役割とは、労働者を解放するマリアであるのかもしれない。
そしてさらに「Z女戦争」を経て手にしたものか、平和を象徴するような曲が数曲続く。
だがそのような平和はもちろんそう長くは続かず、支配・被支配の関係が生じることが、ダンサーたちのパフォーマンスにより示唆される。ここで興味深いのは、支配者階級をもさらに支配するのがももクロちゃんたちであることだ。ただし、次の曲が「サラバ、愛しき悲しみたちよ」であることで、己の中に潜む善と悪の葛藤を超越して支配者たることを自ら放棄あるいはその呪縛から解放されたことがわかる。
そしてラスト曲「灰とダイヤモンド」。この曲は本当に素晴らしい。ただしこの曲から感じられるイメージは、ごく静かに緩慢に訪れる穏やかな終焉だ。だがその先には約束された再生がほの見える。そう、彼女たちはこれから5億年の眠りに入るのだ。
そして1曲目の「Neo STARGATE」で再び目覚めるという、これはThe Stone Rosesの1stにも似た、円環構造をなしているアルバムではないかと思うのだ。
他に気づいたところでは、ダンサーたちの衣装が、1997年のコムデギャルソンのコレクションで発表され衝撃を与えた、人体の凹凸を大胆に再構築するというデザインを取り入れているという点がある。このダンサーたちこそ、5次元世界の住人であるのかもしれない。
そしてこのダンサー達のパフォーマンスだが、今日じっくり観てみたら、ちゃんとこのアルバムのストーリー性を補完するものであることがわかった。昨日の感想では「余計なように感じた」などと書いてしまい、正直すまぬ。だけどこのライブのストーリーと演出は、かなり手ごわい。だけど上述のようにいくらでも妄想を膨らませることができるわけで、そう意味でもこのライブはやはり極上のエンターテインメントであった。
……というようなモヤモヤした妄想を思いっきり吐き出したらすごくすっきりしたぞ。まだまだ見落としている点があるはずなので、あと5回くらい観たいところ。なのでこれはぜひパッケージ化してほしいなあ。

さて今日は後方のステージからも少し遠かった。れにちゃんまでの距離約15メートル。でもやっぱり幸せだった。
実はももクロのライブは、この2日間をもって最初で最後にしようかと思っていたのだ。というのも、「モノノフ」のノリについていけないから。どんな曲にも、しっとりしたバラードでもブギでもロックンロールでもレゲエでも、とにかくコールを入れないと気が済まないというのは無粋の極み。ライブの「盛り上がり」というのは、決してコールやペンライトの多寡で決まるものではない。
それに、きたえーるという地元の中規模の会場で一度でも観ることができれば、それで満足すると思っていたのだ。だけど、ももクロのライブには非常に強い中毒性がある。まあどちらかというと照れ屋で消極的という道民性がいい方向に現れたことで、今回は比較的平和な2日間だったのかもしれないが、どこの会場でもいいからライブをもっともっと観たいと思うようになってしまった。せっかく紫のペンライトも買ったことだし、もっと活躍させてあげたい。