山岸凉子『言霊』

言霊 (KCデラックス)

言霊 (KCデラックス)

いつものバレエ漫画という始まり方だったので、このストーリーがどうタイトルと絡んでくるのかと思ったら、なるほどそういうことか。
根本にあるものは『アラベスク』や『テレプシコーラ』とあまり変わらないような気がする。けれども、かつてそれらの作品では主人公の苦悩や周囲の人間模様を客観的に描写することで表現していたのに対して、薄っぺらい脳科学的な知識で理論づけてしまうというのは抵抗がある。
併録されている「快談・怪談」も、かつてのエッセイ漫画のキレがいま一つ感じられなかった。カール・セーガンに影響を受けながら、同時にいわゆるビリーバーでもあるというのは、世間にはわりとよくいるタイプだったりするけど、オレにはなぜそうなり得るのか理解できん。
もちろん作者とこの本を全否定するものではないが。まあ、これだけ沢山の漫画を描いてきているんだから、たまにはこういうこともあるだろうさ。