星野之宣『鎖の国』

オビにある収録作のリストを見ると、ちょっと残念だった単行本『血引きの岩』と半分くらいかぶっている。でも買って読んだ。
表題作の「鎖の国」はちょっと無茶な部分があるけれども設定が面白い。
宗像教授シリーズは読んだことがなかったけど、こういう雰囲気なのか。予想どおりというか、今まで読んでいなかった理由が諸星大二郎作品とかぶっていそうだったからなのだが、本当にかぶっていたとは。これは『暗黒神話』、<妖怪ハンター>シリーズ、『徐福伝説』などとだいたい同じ。特に主人公の少年と父親の関係などは、<妖怪ハンター>シリーズの「黒い探究者」によく似ている。
当然星野之宣諸星大二郎を読んでいるはずでこの二人は対談や競作もしたりして仲がよいから、似ている、と思われることも織り込み済みだろう。でもやっぱりこういう伝奇ものは諸星大二郎のほうが面白いな。
「血引きの岩」から始まる連作は、やっぱりちょっとキビシイな。描写や演出が過剰すぎるからかな。ここで起きている現象や怪異の原因をすべて説明しちゃっていて、読者に考える余地が与えられていない、というのもあるかもしれない。