清原なつの『パラダイス アベニュー』

80年代から最近のまで、年代はバラバラでも、大人のファンタジーという趣で上手くまとまっている。
いくつかの作品は既読だけど、表題作は初めて読んだ。と思ったら、単行本未収録だったようだ。
巻末のエッセイで大森望も書いているように、日常の中にちょっとズレた非日常が同居していて、でも荒唐無稽とはほど遠い、むしろそれが自然なことであるかのようにさらっと描いてしまうというのが清原なつの作品の面白いところ。この短編集は前述のようにほとんどの登場人物が大人で、だから一歩引いて読むと結構生臭い話もあるのだけれど、そのようなことを感じさせない絶妙なバランス感覚と、透明感というか空気感がよい。
この短編集には80ページ以上の描き下ろしもあるので、実はそこそこいいペースで新作を発表しているんだな。昔はともかく、21世紀に入ってからは寡作、というイメージがあったけど。
SFスキーとしては「新妻惑星」のギャグがたまらない。SF作品の一部を「新妻」に置き換えるというものだけど、「新妻の長い午後」なんて最高だ。「#SFタイトルの一部を新妻に換える」なんていうハッシュタグがあってもよさそう。