森高千里『森高ランド・ツアー1990.3.3 at NHKホール』

こういう言い方は滅多にしないのだけど……森高ファンならばこれは、絶対に何があっても買うべき
年代としては『非実力派宣言』と『古今東西』のちょうど中間にあたる。しかしこのライブはそのどちらともカラーが異なる。何が違うって、これはまさしく「ロック」なのだ。バンドとの一体感も半端なく、20才にしてこの堂々たるパフォーマンス。もし今これをライブハウスでやったら、死人とまではいかなくても失神する者くらい出るんじゃないか。
直前に「17才」のヒットで一気に人気が爆発したにもかかわらず、一曲目は当時未発表だった「のぞかないで」。つづいて「うわさ」という、いきなりオーディエンスに挑戦状を叩きつけるかのような出だし。一転してその次の曲が、ライブが行われたのが桃の節句の日なので「うれしいひなまつり」というのが可笑しい。
続いて森高千里自身が作詞を始めたころの曲や、名カバー「夜の煙突」などでじっくりと聴かせて、中盤で「17才」そしてピンク・レディー・メドレーと、なかなか考えられた構成。そこから後半に向けてグワーーーッと一気に盛り上げる。「ミーハー」、「その後の私[森高コネクション]」、「オーバーヒート・ナイト」、そして「GET SMILE」、「青春」と、この後半の盛り上がりは鳥肌もの。
しかし、ところどころに入るMCは何故かとても早口になる。なんだかんだいっても当時まだ20才。バンドやダンスのサポートもいるとはいえ、基本的にステージの上では一人なわけで、実はいっぱいいっぱいだったのかもしれない。その後の『古今東西』や『ROCK ALIVE』では、もっとリラックスしていたように思う。
それにしても、日本青年館のライブからわずか2年あまりでここまで成長するとは。加えて、作詞・作曲もするし、ドラムはプロのミュージシャンからも高く評価されてるし、ギターやピアノも弾くし、その後は子育てまでしてる。確か、振り付けも自分で考えていると言っていたような。努力を表に見せないタイプではあるのだろうけれども、多才な人だ。
かなり長い活動休止期間も何度かあったけど、それでも何らかの形で活動を継続していて、それでいて決して第一線に躍り出るということがない、絶妙なポジションにいると思う。フォロワーが現れない理由もそのあたりにあるのかも。森高との出会いがなければ、オレ自身Perfumeももクロにハマることもなかっただろう。
パッケージとしては、当時の機材で撮ったわりにはBlu-rayの画質はなかなか良いし、音質も文句なし。上下をトリミングしてアスペクト比を無理矢理16:9になどしていない、4:3のままというのもいい。
このライブの音源がそのまま収録された2枚組のCDも同梱されている。順番としては、このCDを聴いてからBlu-rayを観て正解だった。音源だけを聴いてもワクワクしてあれこれ想像できるのに、直後にその映像までも観られるのだから。
リマスタされた『森高ランド』のCDも入っている。これはリバーブがやや強めになって、音の輪郭がはっきりした印象。紙ケースと写真集がついている初回版を持っているけど(自慢)、これからは聴くときはこちらの盤にしよう。
あと、このBOX限定のDVDも同梱されている。これこそ本当の意味での「特典」といえる内容だ。なのでこのDVDのことは内緒。「とてもよいものだ」とだけ言っておく。
他にパンフレットの復刻版やポスターもついているけど、まあこれらはオマケ的な感じで。でもこれは初回限定生産ということを謳っているので、保存用にもう一つ買おうかと本気で考えているところ。