トランス

おーこれは面白い。
いわゆるサイコスリラーの小説は映像不可能と呼ばれることが多いが、この映画はそれを可能にしたかのよう。セバスチャン・フィツェックやフランク・ティリエの小説が原作だと言われても違和感がない。
まず冒頭の主人公のモノローグがいい。これによってこの映画が普通の叙述形式に則ったものではないということが示唆されるわけで、一気に引き込まれる。
この人物の行動が不自然だなとか、何気ない台詞とかが悉く伏線になっていて、それらが結末に向かって見事に収束する。さらに、こいつは怪しいやつだと思って身構えていると確かに怪しかったんだけど、観る側の予想の裏をかく怪しさだったりする。
トレインスポッティング」もそうだったけど、幻覚・幻想の描き方が上手いし、あとでちゃんと現実と区別できるようになっているのがすごい。
あとこの監督は、観客のスノビズムを刺激するのが上手い。ある台詞を何故かフランス語で言ったかと思うと、次の瞬間にはフランスに舞台が転換していたりして、「ニヤリ」とするところまで読まれてるような気がした。
シアターキノで観たのだけど、次回は千円で観られる「リピーター割引」という券をくれた。確かにこの映画はもう一度観たくなる。