『時を生きる種族』

2009年に出た『時の娘』のほうは「ロマンティック時間SF」で、こちらは「ファンタスティックSF」。あまり読んだことのない作家や、名前すら全く聞いたこともない作家の作品が読めて、なかなかよかった。
編者あとがきにもあるけれども、あまり「ファンタスティック」という言葉にこだわる必要はなさそう。むしろどちらかというと、やや暗い(昏い)話が多い。
といってもロバート・F・ヤングはやはり「ロマンティック」な雰囲気だし、初めて聞くミルドレッド・クリンガーマンという作家の作品も読後感がとても爽やか。
ディ・キャンプは、うーん、まあ普通、かな。ちょっと時代を感じてしまう。シルヴァーバーグはややディック的か。なんとなく、諸星大二郎が漫画化したら面白そうだと思った。いや、ディック的なのはむしろライバーかもしれない。これは漫画化するなら吾妻ひでおで。
最後に収録されているT・L・シャーレッドという作家の中編は、なかなかに衝撃的だ。過去の任意の場所と時間の映像を見ることができる装置、というのは子供のころに夢想したりしたし実際同じ着想の小説も他にある。しかしこのような小道具を使ってこんなに深いテーマを掘り下げることができるとは。書かれたのは1947年とずいぶん昔だが、むしろ今こそ、このような重みを持った作品が読まれるべきではないかと思った。