よしながふみ『大奥』10

大奥 10 (ジェッツコミックス)

大奥 10 (ジェッツコミックス)

9巻が出たのが2012年の暮れだから、約1年ぶりだったんだな。そういえばテレビドラマや映画とのからみもあってか、8巻、9巻と立て続けに出たんだっけ。
だからというわけではないのだけど、この巻はずいぶんと展開が早いように感じた。9巻において近代的かつ理性的な推論によって赤面疱瘡に対抗する手段が示唆され、この10巻ではそれが実現された一方で、多くの登場人物が死んだ。もちろん今までにも作中でたくさんの人物が死んできたが、この巻では「死」というものがわりとあっさりと描かれていて、それは平賀源内の悲劇や天災と後に続く飢饉にしても同様。
でもその平賀源内にしろ不条理ながらも己の死を受け入れた青沼にしろ、大きな達成感に満ちた最期だった。一方で彼らの死を理不尽であると嘆かざるを得ない者もいるわけだけれども。
そしてこのラスト。いわゆる歴史改変ものであるこの『大奥』という物語が、自らが紡ぎ出した流れによって再度男女が逆転するというアクロバット的展開でもって本来そうであった歴史に戻る、と。これはちょっとすごいメタフィクションであるとも言えるんじゃないか。