東京創元社 2014年新刊ラインナップ説明会

ライブ……なのか?
東京創元社が創立60周年ということで、報道関係者だけではなく一般読者も招待してくれるというので応募してみた。東京創元社には早川書房とともに物心ついてからお世話になっているし、自分の人格形成に少なからず影響を与えてくれたわけで、もう興味しんしん。参加できる人数は約40人とはいえ、まあはずれることはないだろうと思っていたけど、当たってよかった。
日本出版クラブ会館というところには初めて行ったけれども、飯田橋から神楽坂を上ったところの閑静な住宅街の真ん中にある、なかなか風情のある昭和なたたずまいの建物だった。
受付で封筒をもらったら、中に創立60周年記念の図書カードが2枚。こんなサービスがあるなんて思ってもいなかったので、これは嬉しい。
司会は池澤春菜という人で、全然知らなかった(すみません)。かなりの読書家のようだったけど、帰ってから調べてみたら父は池澤夏樹で祖父は福永武彦って、なにその羨ましすぎる家庭環境。
海外ミステリ、国内ミステリ、ファンタジィ、SF……と、各ジャンルの編集者の方がプレゼンテーションをして、たまに作家の方が動画でコメントしたり、実際に登壇してお話ししてくれたり。こうして実際に編集に携わった方々が説明してくれると、どの本もとても面白そうに思えてくる。
そして初めて生で荒俣宏を見た。13年越しの『怪奇文学大山脈』という全三巻のアンソロジーを出すそうで、英米文学のアンソロジーのはずなのに原著が英語の小説は全体の3分の1で、他はドイツ語とフランス語なのだという。その経緯を説明するのにどんどん話が深くなってきて、これはとても面白くてもっと聴きたかったけれどもさすがに司会の人がやんわりと巻きをかけた。
また、フォン・シーラッハは名前だけは知っていたけど作品は読んだことがなかったのだが、編集部が一言お願いしたところ、予想外の長文が帰ってきたとのこと。今回その文章がA4用紙1枚に印刷されて前述の封筒に入っていたのだけど、これがなかなかよい文章で、ちょっと感動した。娯楽小説や恋愛小説といった「イイ話」ではなくホラーやスリラーも好んで読む自分のような人種にとっては、一種の救いのような文章だ。とても残念なことにここでは公開できないので、ぜひ彼の著作なり東京創元社のサイトなりに載せてもらいたいところ。
SFに関しては、「創元海外SF叢書」というレーベルがスタートするそうで、これは「創元日本SF叢書」の海外版か。早川書房の「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」のような位置づけかな。ここ数年、東京創元社はあまりSFには力を入れていないんじゃないかと思っていたので、これは嬉しいニュース。でも創元と早川のこのシリーズだけで読むのは手いっぱいになってしまいそうな気もする。
以下、特に興味を惹かれたものを。

そして一番びっくりしたのが、マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア『タイタス・アウェイクス』。タイトルでわかるように、これは『ゴーメンガースト』シリーズの4作目。てっきり3部作だと思っていたので、これは驚いた。マーヴィン・ピークが亡くなったあと、遺されたメモをもとに奥さんのメーヴ・ギルモアが書いたそうだ。『ゴーメンガースト』は学生時代にかなりのめりこんで、数年前にBBCがドラマ化したDVDも持っているくらい好きなんだよな。
最後に社長が登壇して、ジャンル小説の出版社として天下を取る、という旨のことを話していた。いち読者としては、出版界が盛り上がるのはたいへん結構なことではあるけれども、企業としてはとにかく面白い本さえ出してくれればよく、まあ早川書房と(あと国書刊行会と)は持ちつ持たれつで共存してもらえばいいかな。……という呑気なことを言っていられるような状況では、今の日本の出版界はないのかもしれないけれども。
閉会後に今日登場した作家の方々のサイン会があるというので、礼儀として、また興味がある作家でもあるので、宮内悠介氏の『盤上の夜』を購入してサインしてもらった。なんか、ライブアイドルの現場の物販みたいだけど、こういうように作家の方々と交流できるというのも嬉しい。実は『ヨハネスブルグの天使たち』を積んだままでまだ読んでいないので、内心申し訳ない気持ちだった。
去年は仕事がそれはもう忙しくて、活字の本は数冊しか読めなかった。今年はなんとかしたいなあ(切実)。
そして、このようなイベントは東京創元社としては初めての試みだったそうだけれども、読者としてはとても面白かったのでぜひまたやってもらいたいな。今日は2時間弱だったが、もっと長くてもいいかも。個人的に日本SF大会のようなノリは苦手だけど、今日のような企画ならまたぜひ参加したい。


さて、東京創元社の創立60周年記念サイトはここ。http://www.tsogen.co.jp/60th/
4月から、このゆるキャラの栞を書店で配布するそう。