アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』

アサイラム・ピース

アサイラム・ピース

これはなんという不穏で不安な。一作目からもう心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃。
一時期のつげ義春作品のようなこの不安感は、洋の東西を問わず普遍的なものなのだろうか。などと思いつつ読み終わってから訳者あとがきを読んでみると、この精神の闇は近代特有のものではないかという旨のことが書かれてあって、なるほどそうかもしれない。
また作者は生きていくために小説を書かざるをえなかったとあるが、発表されてから七十年以上たった今、やはり生きていく上でこのような小説を必要としている読者もいるのだなあ。