山本直樹『レッド』8

レッド(8)<完> (KCデラックス)

レッド(8)<完> (KCデラックス)

ついに総括という名のリンチによる死者が。
だけど正直、しっくりこないというか、ストーリーと表現が噛み合っていないというか、違和感を覚えた。北や赤城の言動が少しずつ独善的で非論理的になっていくのはわかるんだけど、そのようなシーンにおける他者の表情などの表現が相応しくないのではないかと感じた。
本人の総括を促すために殴っているのだから、その際に「どうしてあんなことしたん」と発言するのは報復的行為である、という理屈は筋が通っている。それ以前に根本が狂っているにしても。だから彼ら、というのは主に北と赤城のことだけれども、の言動は納得できるのだけど、周囲の人たちがただの群衆というか背景になってしまっている。暴力や狂気に対する反応が希薄になり自我を表に出さないことで現実から逃避している、ということの表現であるのならばいいのだけれど。
山本直樹の他の作品で見られるような現実と幻想の境界があいまいになるという描写が許されるなら、逆説的だけれどもこの群集劇もスッキリと表現できるような気もする。でもこの作品は半分ドキュメンタリーなので、それは禁じ手なのだろう。