駕籠真太郎『超動力蒙古大襲来』

超動力蒙古大襲来

超動力蒙古大襲来

いろいろと中途半端な漫画だなあ。
モンゴル帝国が短期間にアジアを制覇できたのを「モンゴル馬」という作者お得意の巨人に結びつけるのはいいとして、そこからの発展のさせかたが物足りない。疑似歴史(と、裏表紙に書かれているのでこの言葉を使うけど、「歴史改変」のほうが一般的では)ならばそれに撤すればいいのに、エロを混ぜるから妙な具合になってしまう。エロならもっとエロくすればいいのに。
蒸気機関をモンゴル馬に置き換えるだけで、「疑似歴史」ものとしてはかなり面白くなるのでは。テクノロジーの発展もその文脈でエスカレートさせていけば、例えば船舶なら外輪船→スクリュー船→潜水艦のように、モンゴル馬という着想をどう発展させていくか次第で、話がふくらむのに。
というのはいち読者の勝手な思いつきなので作者の創作意図とはかけ離れているのかもしれないが、そうだとするとその意図が見えてこない。巨人の由来も、神話時代のエピソードを膨らませれば伝奇ものとしても面白くなりそうなのに、後半では放ったらかしになってしまっている。
この漫画の最大の欠点は、最終話のたった1コマ、航空機の描写にこのモンゴル馬が使われている気配がまったくないこと。すべての動力の源がモンゴル馬であるという世界観を描ききるならば、航空機の動力もそうでなければならない。逆に航空機(に限らずなんでもいいが)にモンゴル馬が使われていれば、その偏執的な創作姿勢でもって巻き返せたかもしれない。
モンゴル馬や疑似歴史といった本筋以外の細かいところ、嘔吐会話や第一次大戦塹壕エスカレートしていくエピソードなどが面白かっただけに、実に惜しい。