ローレン・ビュークス『シャイニング・ガール』

シャイニング・ガール (ハヤカワ文庫NV)

シャイニング・ガール (ハヤカワ文庫NV)

「タイムトラベル・サイコサスペンス」ってなんじゃそりゃ、と思うけれども、読んでみると実際その通りなのだった。
導入はあえて説明を省いているので、ちょっとわかりづらいがとにかく読み進める。たまに、あれ?ここはどうなってるんだっけ?と後戻りすることもしばしば。でも最初をクリアすれば、あとは勢いで読ませる。
時間テーマSFがぁ〜、なんていうことを考えると却ってつまづきそう。この小説はそういう理屈抜きで楽しんだほうがいいと思う。影の主人公ともいえるは、合理的な説明など不要/無用なのだ。そんなことよりも、1930年代から1990年代にかけての時間的パノラマを俯瞰するというという快楽に浸ろう。暴力と差別と執念と怠惰に酔おう。
この作家は初めて読んだけど、なかなか上手い。文章もヒネリがきいていて、あるがままに描写するのではなく、さりげない仄めかしや、ビジュアルやイメージの連鎖でもって表現したり、ここは読む側の集中力も試されるところ。だから読み飛ばしてしまうと肝心なところスルーしてしまう。もちろん、タイムトラベルの要素もあるので、登場人物名と日付からなる章の見出しも重要。



ところで、読書メータを見てみると、「わからない」、「むずかしい」という感想が多い。なんだかなー。生まれて初めて小説を読んだとでもいうのかなー。