マデリン・アシュビー『vN』
- 作者: マデリン・アシュビー,ふゆの春秋,大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/12/19
- メディア: 新書
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vNである主人公のエイミーがいきなり祖母を文字通り食べてしまうところや、それによってダイエットで抑制されていた成長が一気に解放されて成人の大きさになってしまうという出だしはなかなか面白い。しかし、vNの性差が実際のところどうなっているのかは不明ではあるが、人間でいえば男性の身体をしているハビエルが帝王切開さながらに自分の複製を「出産」するというのは、描写が狙いすぎのような気がした。以降、この手のショッキングな描写でもって驚かせようという下心的なものが見えてしまい、ノりきれなかった。
ロボット三原則の代わりに導入された、人類とvN自身を守るための機構が「フェイルセイフ」というのはまあアリかもしれないが、そうするとソフトウェア工学または数理論理学的な設定やエピソードを期待してしまうわけですよメンドクサイSF読者としては。このあたりがやや物足りなく感じてしまった。
まあそのへんは割り引いてもいいし、一種のロード・ムービー的な雰囲気がエイミーとハビエルの成長物語としての側面ともマッチしている。
でも全体的に薄味なんだよなあ。