幕が上がる

この映画に関しては期待値ゼロどころかマイナスだったわけですよ。だってメンバーたちが全国の劇場に舞台挨拶に行くキャンペーンとか、テレビの露出が急激に増えてしかも内容がだいたい同じだったりとか、滅多にゲストが出ないももクロのラジオ番組に監督を呼んだりとか。こりゃ逆にヤバいんじゃないのか、って思うでしょ。
ところがどうだ、そんな予想を超えて面白いでやんの。出だしはやっぱりビミョーかなあと思ってたら、黒木華が登場したところからがらりと雰囲気が変わった。意外に展開が早くて、もっと丁寧に描写したほうがいいんじゃないかと思うこともあったけど、終わってみれば2時間があっという間で、これでよかったのかもしれない。
ともすれば吉岡先生が影の主役で終わってしまいかねないストーリーを、ちゃんと青春群像劇として完結させているのもいい。
演劇特有の臭みとフジテレビ系につきもののえぐみの相乗効果でなんともむず痒いトーンがうっすらと全体に漂ってはいたが、きっとこれでもガマンして抑えたんだろう。あと、ももクロの身内のカメオ出演や内輪ネタが多すぎて閉口した。
って褒めてるのか貶しているのかわからなくなったけど、素直にいい映画だと思う。ももクロに関する予備知識なんてないほうが楽しめるんじゃないか。
「ただのアイドル映画じゃあない」とか「ふつうに良い青春映画だ」という評をたまに目にするが、これは他に褒めどころがないのではなくて、このようにしか言い様がないんじゃないだろうか。実際、オレ自身どう言えばいいのかわからないところがある。ストーリーはいたって単純なのに。
ももクロに興味がなくても、演劇に興味がなくても、たぶん楽しめる。言葉にするのは難しいしあえて言葉にしてしまうと「若さ」「青春」といった陳腐な言葉にしかならない、そんな普遍的な何かがこの映画にはある。