セッション

もちろんこれはフィクション。なので音楽教師の暴力的指導やハラスメントが観客に与える影響云々や、実際のジャズセッションにおける段取りにリアリティがない、というようなことは度外視する。だってそんなことを言い始めたら、いくらウデがあるドラマーだろうと数ヶ月のブランクがあるのに音合わせもせずにぶっつけ本番、なんてあり得ないし。
ということでこの映画の第一印象が「ジャンプのスポ根マンガ」というのは、ごくごく自然なこと。さらに師弟の関係としては、バレエ(『アラベスク』)やフィギュアスケート(『愛のアランフェス』)を題材とした少女マンガのそれに似ている。この映画の音楽教師と生徒の間に、恋愛にも似た感情があることを見いだすのは容易だろうし。
だから音楽的にどうのというよりは、スポ根+少女マンガという文脈でもって、リアリズムではなくかなりフィクション性の高い映画として観た。『侍ジャイアンツ』や『包丁人味平』のように、こんな展開アリエナーイと笑っていたところが、とことんまで突き詰められるとある種の凄みが沸いてくるという、絶妙のバランスの上に成り立っている映画であるともいえる。
突然サイコスリラーやメタフィクションに転じてもおかしくないよなーなどと思いながら観ていた。「いい映画」ではないかもしれないけど、「面白い映画」ではあった。