山上たつひこ『金瓶梅』

金瓶梅

金瓶梅

どうもこんにちは、気持ちの悪い人です。
これは面白いぞ。『鬼刃流転』と並んで、山上たつひこのギャグ漫画の中では、個人的に甲乙つけがたい。
その『鬼刃流転』とだいたい同じ時期に描かれたようだし絵柄やギャグの傾向も似ているけど、主人公だけが二頭身キャラというのが異なっているかな。対象としている読者が大人だというのもあるかもしれないが、ドタバタや一発ギャグはあまりなくて、主人公と脇役、また脇役どうしの掛け合いが特に面白い。止め絵と地の文だけの

月娘は金蓮のつま先から頭のてっぺんまで一瞥した/エロチシズムが下から上へと走った
次に頭のてっぺんからつま先まで一瞥した/エロチシズムが上から下へと走った
今度は右胸から左胸を一瞥した/エロチシズムが右から左へと走った
そして 左胸から右胸を一瞥すると/やはりエロチシズムが左から右へと走ったのである

というくだりなんかは最高だ(文章だけだとさっぱり面白さが伝わらないが)。
原典とは結末が異なっているようだが、これはこれでいい。序盤に登場した冴えない男は蒸し饅頭売りだったが、主人公は団子屋として平凡な人生に落ち着く。この結末にはある種の爽快感があるわけで、ちょうどバブル期に描かれたというのがまた興味深い。