高橋昌一郎『ゲーデルの哲学』

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)

買ってから気がついたのだが、これはすでに読んでた。講談社現代新書の装丁が数年前に一新されたのと、読んだのがもう約10年前で記憶がやや風化していることから、人間機械論から導出されるアルゴリズム的振るまいよりは高度なシステムである我が知覚は、両者を別ものと判断したようだ。なんっちってー。
まあでも、良い本であることは間違いないし、復習の意味もこめて再読してみた。
改めて読んでみると、不完全定理の説明に用いられる、ナイト(正直者)とネイブ(嘘つき)の島、さらにそれぞれの島の住人の一部で構成されるナイトクラブとネイブクラブという喩えは、よくできている。不完全性定理を単に嘘つきのパラドクスで説明している例は山のようにあるが、これでは本書で述べられているような、命題の真偽と証明可能性とを混同してしまうという罠から逃れるのは難しいだろう。
この本を最初に読んだとき以降、数学・論理学者としてはゲーデルの直系ともいえるペンローズや、フィクションではあるものの批判的な立場をとるイーガンの小説などを読んできたわけだが、自分の立場がこれらの主張のいわくいいがたい混淆となっていることに気がついた。ただ、人間が「機械以上の何か」であるという考えには反対。ダメ、ゼッタイ。